風や重力、雨水などの自然の力でボールが動くこともあれば、同伴者の球や用具に当たるなど偶然の接触で動くこともあります。実は、「誰(何)が動かしたか」と「どこ(区域)で起きたか」で対処が変わります。本記事は、グリーン上の特例・探索中に動かしたとき・ティーから落ちた・バックスイング中に動いたまで、現場で迷わないように手順ファーストで整理します。
目次
基本原則|「誰(何)が動かしたか」とKVC
ボールが動いた原因は、ルール上つぎの4つに分類します:①自然の力(風・水・重力 等)/②自分(キャディ含む)/③相手(マッチプレー)/④外的影響(人・動物・他の球・用具 等)。
原因の判定はKVC(Known or Virtually Certain=事実上の確実性≒95%)で行い、95%未満で断定できない場合は「自然の力」扱いが原則です。
A. 自然の力で動いたとき(風・水・重力など)
原則:無罰で新しい位置からプレーします。ただしグリーン上は重要な例外があります。
- グリーン以外(ジェネラルエリア/バンカー/PA):無罰で動いた先からプレー。
- グリーン上:
- いったん「拾い上げて元に置いた」球が動いた → 元の位置にリプレース(置き直し)。
- まだ拾い上げていない球が風で転がった → 動いた先からプレー。
- 置いた/置き直した/ドロップした球が自然の力で別区域へ出た(例:グリーン→GAやOB)→ 元の位置にリプレース(2023年以降の明確化)。
B. 外的影響・他人・別の球などで動いたとき
「外的影響」(他のプレーヤーの球や人・動物・用具 等)が静止中の自分の球を動かした場合は無罰で元の位置にリプレースします。
自分や相手が意図せずに動かしたケースは以下が基本です。
- 同伴者のショットが自分の球に当たって動いた:自分の球は元の位置にリプレース。打った側は通常無罰であるが球はあるがまま。
- 観客・動物・係員・カート等が原因:自分の球を元の位置へリプレース(無罰)。
- 自分が原因(誤って蹴った・クラブを落とした 等):
- グリーン上:無罰でリプレース。
- グリーン以外:1罰打でリプレース(ただし探索中に偶然動かしたなら無罰でリプレース)。
C. ボールが「動いている最中」に何かに当たった(偶然の接触)
ショットしたボールが飛んでいる/転がっている最中に人や物、別の球に偶然当たった場合、通常は無罰でその結果を受け入れてあるがままにプレーします。
ただしグリーン上の特例に注意:
- パッティンググリーンからのパットが、グリーン上で静止している他人の球に当たった(ストロークプレー):2罰打。自分の球は止まった所から、当たられた側は元の位置にリプレース。
- 上記がマッチプレー:無罰(当たられた側は元の位置にリプレース)。
- 自分や同伴者の体・用具に“偶然”当たった:無罰であるがままにプレー(故意に当てた場合は別)。
- 人や動物の上で止まった:規定の救済でドロップ/プレースして再開。
D. バックスイング中/ストローク中に「静止球」が動いた
ストロークを続行して打ってしまった場合は、原因を問わずその結果を受け入れてあるがままにプレーします(元位置へ戻さない)。
※打たずに中止できた場合は、原因判定(自分が動かしたか、自然の力か 等)に応じて上記A/Bの扱いへ。
E. ティーからボールが落ちた/動いた
- 開幕のティーアップ中に風で落ちた・手が触れて落ちた:無罰。ティーアップし直してOK(球はまだインプレーではない)。
- ティーイングエリア内での打ち直し:前のストロークがティーイングエリア内で行われ、球がまだその中にあるなら、無罰で球やティーを交換・置き直しが可能。
OK/NG早見表
| 状況 | OK/NG | ポイント |
|---|---|---|
| 風でフェアウェイの球が転がった | OK(無罰) | 動いた先からプレー |
| グリーンでいったん置き直した球が風で動いた | OK(無罰) | 元の位置にリプレース |
| 探索中にうっかり球を動かした | OK(無罰) | 元の位置にリプレース |
| フェアウェイでうっかり蹴って動かした | NG(1罰) | 元の位置にリプレース |
| 自分のアプローチが他人の静止球に当たった | OK(無罰) | 自分はあるがまま/当たられた側はリプレース |
| グリーン上のパットが、グリーン上の静止球に当たった(ストローク) | NG(2罰) | 自分はあるがまま/当たられた側はリプレース |
| バックスイング中に球が動いたが打ってしまった | OK(無罰) | あるがままに続行(原因不問) |
| ティーから球が風で落ちた | OK(無罰) | ティーアップし直しで可 |
ケースで理解する|現場の「正解」
- 強風でグリーンの球が転がる:マーク・リプレース済みなら元の位置へ。未リプレースなら転がった先から。
- 同伴者の球に当ててしまった:打った自分は無罰であるがまま。当てられた側は元位置にリプレース。
- 素振りの反動でフェアウェイの球が少し動いた:1罰でリプレース。
- 落ち葉だらけのラフで探索中、足が当たって動いた:無罰でリプレース(位置は合理的推定でOK)。
- パットが動く用具に当たり、その上で止まった:規定の救済(直下を基準にドロップ/プレース)。
判断フロー(30~60秒)
- 原因を分類(自然の力/自分/相手/外的影響)。迷う時はKVC=95%の確実性を基準に。
- 区域を確認(グリーンか否か)。
- 処置:
・自然の力=新しい位置(グリーンで置き直し済みならリプレース)。
・自分が原因=リプレース(グリーン上や探索中は無罰、それ以外は1罰)。
・外的影響=自分の球をリプレース(無罰)。
・球が動いている最中の接触=多くは無罰であるがまま(ただしグリーン→2罰の例外)。
よくある質問(FAQ)
- Q. 風でグリーンの球が動きました。戻しますか?
- A. マーク→リプレース済みなら元の位置にリプレース。そうでなければ動いた先からです。
- Q. 探索中にうっかり動かしました。
- A. 無罰でリプレース。位置が不明でも合理的推定でOK。
- Q. パットがグリーン上の他人の球に当たりました(ストローク)。
- A. 2罰。自分の球は止まった所から、当たられた側は元の位置にリプレースします。
- Q. ティーから球が風で落ちました。
- A. 無罰。ティーアップし直しでプレー再開できます。
- Q. バックスイング中に球が動いたが打ってしまいました。
- A. 無罰。あるがままに続行します(元位置に戻しません)。