フォルスフロント(False Front)は、グリーン手前が強い下りになっていて、そこに落とすとボールが手前へ戻される厄介な形状です。
「ゴルフは手前から」が基本でも、“手前に落とさない”例外がまさにこのケース。本記事では、段の頂点(クレスト)の見極め→キャリーで段上に運ぶ逆算→落とし所の歩数設計→番手と弾道の決め方まで、ラウンド中に即使える手順でまとめます。
フォルスフロントの攻略法サマリー
- クレスト(段の頂点)を探す → “段上+3〜5m”にキャリーで落とすのが原則。
- 落とし所はエッジ基準でなく「クレスト基準」。歩測はクレスト+2〜3歩が目安。
- スピンで止めに行かない。スリークォーター+やや高めの打ち出しで深めに運ぶ。
- 中途半端な距離は作らず、フル〜スリークォーターの得意距離にレイアップ(レイアップ戦略)。
- 寄らなくてもOK。上りのパットを残せば成功(端ピンは追わない:安全サイド)。
なぜ“手前から”が通用しない?(フォルスフロントの原理)
フォルスフロントはグリーン手前が自分側へ強く傾斜。そこへ落とすと、バウンド後に摩擦+重力でボールが手前へ退がるため、グリーンに乗りにくい・戻って花道に落ちるが頻発します。
対策はシンプルで、段の頂点(クレスト)を越えた“面”に直接キャリーで落とすこと。スピンで手前に戻す球はリスクが高く、深めのキャリーで上りパットを残す方が確率的に有利です。
クレストの見極め(30秒チェック)
到着したら、次の3点で段の頂点を確認します。
- 色と陰影:芝の色が変わるリム(光の当たり方で帯が見える)。
- 刈り目:手前の転がりと上面の転がりが変わる境目。
- 横から見る:同伴者の準備中に横移動し、一番高い稜線を目で取る。
距離計やカートナビに「フロントエッジまでの距離」が出るなら、現場の目視で“クレストまでの距離”を推定し、そこから+3〜5mを落とし所に設定します。
落とし所の設計:クレスト+2〜3歩(段上基準)
通常の寄せで使う「エッジ+2歩」ではなく、フォルスフロントでは「クレスト+2〜3歩」が基準です。
- 速い/硬い面:クレスト+2歩(短め着地)。
- 遅い/柔らかい面:クレスト+3〜4歩(やや深め)。
- フォロー:+1歩深く、アゲインスト:−1歩浅く(風の読み方)。
- 上り/下り:段上の面が上りなら+1歩、下りなら−1歩。
狙いは“段上で止める”こと。クレスト手前やクレスト上に落とすと、スピンや傾斜で戻される可能性が高まります。
番手・弾道・スピンの考え方(再現性重視)
フォルスフロントでは“深めのキャリー”>“強いスピンの止め”が基本。弾道とスピンは次の方針で。
- 弾道:やや高めの打ち出しでクレストを越え、段上に落としてから転がしで距離調整。
- スイング:スリークォーターで入射を安定。強振はスピン過多→戻りの原因。
- クラブ:PW/AW/50–54°を基準に、SWは“最小限”だけ。状況次第で9Iの低め球も有効(面が遅いとき)。
- ボール位置:やや左寄り(高めに出す)。グリップは短めで再現性を取る。
レイアップ距離の作り方(セカンド設計)
中途半端な距離(40–60y)が最もミスを誘発します。セカンドは得意距離(100/90/80yなど)を残し、フル〜スリークォーターの安定球で段上に運びましょう(レイアップ戦略)。
端ピンは追わず、センター基準+安全サイドで「乗ればOK」。
ケース別:フォルスフロントの実戦対応
ケース1:手前長い下り+硬い面(典型)
- 狙い:クレスト+2歩(短め)。
- 番手:PW/AWのスリークォーターで高めにキャリー→段上で止める。
- NG:SWで“キュッ”と止めに行く(戻りやすい)。
ケース2:手前短い下り+柔らかい面
- 狙い:クレスト+3〜4歩(やや深め)。
- 番手:AW/9Iで打ち出しは中〜高。転がりで距離を作る。
ケース3:手前からグリーン外へ戻され、エプロンから再チャレンジ
- 選択:パター or UT/7Iのパター打ちが第一候補。
- 着地点:クレスト+2歩に転がしで乗せる。届かせる意識。
ケース4:クレストすぐ奥にピン(段上すぐの端ピン)
- 狙い:ピン直は危険。センター高めに安全着地→上りを残す2パット。
- 寄せ:上りラインの転がしで“30cm圏内”に(距離感)。
ケース5:雨(面が重い)/冬(表面が硬い)
段上に乗った後:パッティングの考え方
目標は上りの2パット。下りに落とすとまた段へ戻されます。
ティーショットの布石(フォルスフロントを活かす)
ティーから段上へキャリーで届く番手が打てる距離を残すのが最重要。
OK/NG早見表(フォルスフロント編)
| 行動 | OK/NG | ポイント |
|---|---|---|
| クレストを特定して“段上+3〜5m”にキャリー | OK | 手前に戻されるリスクを断つ“原則” |
| 落とし所=クレスト+2〜3歩(歩測) | OK | 速い/硬い=浅め、遅い/柔らかい=深め |
| スリークォーターで高めに運ぶ | OK | 強振スピン過多の戻りを避ける |
| SWで“キュッ”と止めにいく | NG | 段上に落ちないと戻りやすい。再現性が低い |
| 40–60yの中途半端な距離を残す | NG | フル〜スリークォーターの得意距離に調整 |
60秒フロー(現場での意思決定)
- 10秒:横から見てクレスト(段頂)を特定。
- 15秒:クレストまでの距離→落とし所=クレスト+3〜5mに設定。
- 15秒:面の速さ/風/高低差で±1歩微調整。
- 10秒:スリークォーターの番手決定(強振NG)。
- 10秒:外してOKの方向=安全サイドを確認。
よくある質問(FAQ)
- Q. クレストが見つけづらいときのコツは?
- A. 横移動して稜線を探す、芝の色の帯を探す、同伴者の視点を借りる。迷ったら深め(+5m)に保険をかけます。
- Q. スピンを増やせば段上で止まりますか?
- A. 段上に確実に落とせる人以外は、スピンで制御しようとすると戻りのリスクが上がります。深めのキャリーで再現性を優先しましょう。
- Q. ピンが段上すぐ(奥に余裕なし)のときは?
- A. ピン直は危険。センター高めに安全着地→上りの2パットを最優先にしてください。
- Q. レイアップはどの距離を残せばいい?
- A. 自分のフル〜スリークォーターで打てる得意距離(例:100/90/80y)。刻み方の考え方を参照。
- Q. 転がしは使えますか?
- A. 手前が強い下りでは転がしは戻されるので基本NG。段上へキャリーで乗せ、そこから上りを残しましょう。