ラウンド当日の判断を速く・正しくするには、ローカルルール(委員会がそのコース・競技のために定める追加規定)の理解が近道です。この記事では、どこで確認するか/どう読むかを最初に押さえ、実務で登場頻度の高い設定(NPZ・ドロップゾーン・冬季プレファードライ・距離計測器・前進4打など)をテキストだけで整理します。
ローカルルールとは|“コース固有の追加規定”
ローカルルールは、ゴルフ規則(The Rules of Golf)そのものを置き換えるものではなく、委員会がコースや競技の実情に合わせて追加・補足する規定です。たとえば安全・保全・進行のためにNPZ(立入禁止)を設定したり、悪天候でプレファードライを適用したりします。
ポイントはその日・そのコース限定で効力があること。別のゴルフ場でも同じとは限りません。
どこで確認する?|掲示・カード・タブレット・マスター室
ローカルルールはつぎの場所に掲示・記載されるのが一般的です。スタート前に必ず一度は目を通すのが基本です。
- スコアカードの欄:定番の設定(誤グリーン救済/距離計測器/前進4打など)が短文で載ります。
- クラブハウスの掲示板・スタート小屋:その日の臨時運用(冬季・荒天・工事区画)が告知されます。
- カートのタブレット:NPZ・ドロップゾーンの位置、進行基準が載ることがあります。
- マスター室の口頭案内:荒天時の運用や当日の注意点(避難・中断手順など)。
迷ったら「誰に適用/どの区域/何をしてよい・だめ」の3点を意識して読み解きます。
“よくあるローカルルール”早見表
実務でよく登場する設定を、用途/基本の考え方/現場での注意で一覧化しました。詳細は後続の章で個別解説します。
設定 | 用途 | 基本の考え方 | 現場の注意 |
---|---|---|---|
NPZ(ノープレイゾーン) | 保護・安全・工事区画の立入禁止 | 必ず救済(プレー禁止)。GA/グリーン/バンカー内は無罰、PA内NPZはPA救済(有罰) | 杭・線・掲示で境界を確認。基準点は「最近接の完全救済点」 |
ドロップゾーン(DZ) | 通常救済が取りにくい場所の代替位置 | 掲示があれば指定の場所へドロップ(適用条件を確認) | 「通常救済とどちらを優先?」は掲示文言に従う |
プレファードライ(冬季) | 悪天候時のフェアウェイ保護・公平性 | マーク→拾い上げ→拭く→規定距離内でリプレース | 対象区域と距離の上限(例:スコアカードに記載)を厳守 |
距離計測器の使用 | 進行と戦略の補助 | 原則可。ただし高低差(スロープ)等の機能は無効化が一般的 | 競技では機能制限が厳密。掲示・条件書を確認 |
前進4打(特設ティ) | 渋滞緩和・初心者配慮 | 採用コースでのみ有効。競技では不採用が基本 | 案内板の位置・打順・罰打の扱いを現地の指示に従う |
TIO(仮設の動かせない障害物) | 大会限定の大型構造物への対応 | 無罰救済。ただし通常営業では非適用 | 掲示・競技ローカルでのみ有効 |
NPZ(ノープレイゾーン)|“必ず救済”の代表格
保護植物や工事区画など、委員会がプレーを禁止した区域がNPZです。球がNPZ内、またはスタンスやスイングがNPZに干渉する場合、必ず無罰で救済します(プレー禁止)。ただしペナルティエリアの中に設定されたNPZは、PAの救済(有罰)で処理します。
- 確認ポイント:境界の表示(杭・線・掲示)、対象区域(GA/バンカー/グリーン/PA内)。
- 手順:最近接の完全救済点→1クラブレングス内にドロップ(グリーン上はプレース)。
関連記事:無罰救済のすべて / 池ポチャ対策(赤・黄の救済)
ドロップゾーン(DZ)の使い方|通常救済との関係
崖・林・池の周辺など、通常の救済手順だとプレーが著しく困難になりやすい場所に、委員会が指定の救済位置として設けるのがドロップゾーンです。
掲示には「使用可(オプション)」か「使用必須」が明記されるのが一般的。通常救済とどちらを優先するかは、その日の掲示に従います。
- 読み方のコツ:「誰に」「どの救済で」「どの位置に」ドロップと書いてあるかを3行で把握。
- ドロップは膝の高さから真下、指定枠・線の中に落ちて中に止まる。
冬季のプレファードライ|手順とNG
泥・剥がれ等でフェアウェイのコンディションが悪いとき、一定距離内で球を拭いて置き直す運用が適用されることがあります(ローカル掲示で期間・対象区域・距離を明記)。
- ボールをマークして拾い上げる。
- 汚れを拭き取り、掲示の距離(例:6インチ/ワンクラブ等)の範囲内でリプレース。
- ホールに近づかないこと、対象区域(多くはフェアウェイ刈り高以下)を厳守。
NG:対象外区域での適用/距離超過/マークせずに動かす 等。誤所プレーの原因になります。
距離計測器(DMD)|使えるが“機能制限”が前提
通常営業では距離計測器の使用は原則可ですが、高低差(スロープ)や風読みなどの機能は無効化が基本です。クラブ競技や公式競技では機能制限がより厳密なことがあるため、カード・掲示・条件書を確認しましょう。
前進4打(特設ティ)|採用時のみ有効
渋滞緩和のため、OBやロストボール時に前進地点から4打目としてプレーできる運用を採用するコースがあります。
これは採用コース・当日の掲示があるときだけ有効です(競技では不採用が基本)。案内板の位置・打順・罰打の扱いは必ず現地の指示に従ってください。
TIO(テンポラリーな障害物)|大会限定の特例
テレビ塔・リーダーボード等の大型仮設物が対象。無罰救済が与えられることがありますが、通常営業では非適用です。競技の条件書とローカルルールで告知されます。
掲示の“読み方”テンプレ(3行で要点を掴む)
ローカル文面は短くても情報量が多いもの。つぎの3行テンプレで素早く要点を抜き出すと、現場の判断が速くなります。
- 誰に(すべてのプレーヤー/特定ホールのみ/競技のみ等)
- どの区域で(GA/グリーン/バンカー/PA内 等)
- 何をしてよい・だめ(救済方法・ドロップ場所・機能制限・罰の有無)
ローカルルールと“救済”の関係(整理)
ローカルは救済の入口を明確にする役割を持ちます。たとえば、NPZなら“必ず救済”、ドロップゾーンなら“ここにドロップ可/必須”といった具合です。
実際の手順は、無罰なら 無罰救済、バンカーなら バンカーのルール早見表、アンプレアブルなら バンカーのアンプレアブル の章に沿って進めればOKです。
よくある質問(FAQ)
- ローカルルールは“規則より強い”の?
- いいえ。規則の枠内で運用される追加規定です。掲示・条件書に沿って判断します。
- 別のコースでも同じ?
- 同じとは限りません。その日・そのコースの掲示が優先です。
- ドロップゾーンと通常救済はどちらを選ぶ?
- 掲示に「使用可/必須」などの指定があります。明記がない場合は、通常救済と比較してプレー可能性や進行を加味して選びます。
- 距離計測器の“スロープ”は使える?
- 一般営業では無効化が前提が多く、競技ではより厳格です。掲示や条件書を確認してください。