ラフは“読む”スポーツです。同じスイングでも、草の向き・浮き沈み・湿りでスピンと打ち出しが変わり、飛距離・曲がり・止まりが別物になります。本記事は、3要素の診断→番手と狙いの決定→ショット調整を、初心者にも運用できる手順でまとめました。関連の現象はフライヤー対策も参照してください。
目次
まず結論(30秒サマリー)
- 見るのは①草の向き(順目/逆目/横目)②浮き/沈み ③湿り/密度の3要素。
- 順目+浮き+湿りが揃うほどフライヤー(飛びすぎ)寄り → 短い番手+手前キャリー。
- 逆目+沈みは出球ロス(ショート/引っ掛け)寄り → 番手を上げる+厚めコンタクト。
- 判断は安全側に。奥が死んでいるホールは絶対ショート目が原則。
3要素でライを読む(先に“原因”を把握)
① 草の向き(グレイン)
- 順目(ターゲット方向に寝ている):フェースに芝が滑り込みやすい→低スピン・飛びやすい。
- 逆目(ターゲットと反対に起きている):ヘッド減速・引っ掛け寄り→飛ばない/上がらない。
- 横目:フェース回転が不安定→左右ブレ注意。
② 浮き/沈み
- 浮き(草の上に乗る):ボール先に芝が当たりやすくフライヤー寄り。
- 沈み(草に埋もれる):ダフリ/フェース閉じ寄り→出球ロス。
③ 湿り/密度
- 湿り/朝露/雨上がり:水膜で摩擦低下→フライヤー増幅。
- 密度(厚く柔らかい/締まって硬い):柔らかいほど芝屑が噛みやすい、硬いほど跳ねやすい。
ルール上、状況の改善(規則8)に当たる押し倒し・ならしはNG。軽いソールや合理的な探索の範囲で観察しましょう。
ライ診断スコア(0〜3点で即判断)
下の3項目で当てはまる数を数え、スコア=0〜3で意思決定します。
- 順目(→)なら +1
- 浮きなら +1
- 湿り(朝露/雨)なら +1
| スコア | 起きやすい現象 | 番手 | 狙い/高さ |
|---|---|---|---|
| 0 | 平常に近い | 基準 | 通常狙い |
| 1 | 軽いフライヤー or 軽いロス | ±0〜−0.5番手 | やや手前キャリー/やや低め |
| 2 | 典型的フライヤー寄り | −1〜−1.5番手 | 手前キャリー+許容ラン/高さ抑えめ |
| 3 | 強いフライヤー | −2番手+グリップダウン | 確実に手前/風が順ならさらに短い |
逆目+沈みは別系統(ロス)。その場合は+1〜+2番手へ。詳しくは下の「ショットタイプ別」を参照。
番手と狙いの決め方(安全側が基本)
- フライヤー寄り:短い番手+手前キャリー。奥が死んでいるホールは徹底してショート目。
- ロス寄り(逆目/沈み):番手を上げる+厚めコンタクトで距離を回収。
- 左右に横目:安全サイドへ幅を持って狙う(ラフ側に外すより花道)。
ショットタイプ別の調整
ミドル〜ロングショット(6I〜UT)
- フライヤー寄り:−1〜−2番手、グリップ1cm短く、手前キャリー。フォローは低く長く。
- ロス寄り:+1番手、球は半個右、左体重55〜60%固定。強振しない。
ショートアイアン(9I〜PW)
- フライヤー寄り:止まりにくい→着地点を必ず手前へ。ピンを“直”で狙わない。
- ロス寄り:+1番手+厚めコンタクトで高さを確保。
グリーン周り(〜40y)
- ラフからは転がし第一。8I/9I/UTのパッティング風も有効。
- 上げるなら良いライ限定。着地点を短く設定。
セットアップとスイングの共通原則
- ボール位置:基準はセンター(ロス寄りなら半個右)。
- 体重配分:左55〜60%固定、スウェー抑制。
- 入射:浅すぎず深すぎず。最下点はボール直後に。
- テンポ:7〜8割。大振りは草の抵抗を増やすだけ。
- フェース向き:基本スクエア。大きく開かない(芝を拾う)。
OK/NG早見表
| 行為 | OK/NG | ポイント |
|---|---|---|
| 順目/浮き/湿りを3チェック | OK | 2つ以上で短い番手+手前キャリー |
| 逆目/沈みで無理に高さを出す | NG | +1番手+厚めコンタクトで確実に |
| 横目でピン直狙い | NG | 安全サイドへ幅を持って狙う |
| グリーン奥が死んでいるのに強気 | NG | 絶対ショート目の原則 |
| ラフからの転がし活用 | OK | UT/8I/9Iのパッティング風で安定 |
60秒フロー(意思決定テンプレ)
- ライ診断:順目/浮き/湿りで0〜3点。
- 番手決定:0→基準、1→−0.5、2→−1〜1.5、3→−2+グリップダウン(ロス寄りは+1〜2)。
- 狙い:手前キャリー(横目は安全サイド)。
- 型づくり:センター(or 半個右)/左55–60%/7〜8割テンポ。
- 実行&記録:キャリー感覚を歩測でメモし更新。
自己メモテンプレ(スマホ貼付用)
【ライ】順目/逆目/横目:___/浮き/沈み:___/湿り:乾/湿【スコア】0/1/2/3 → 番手:基準/−0.5/−1/−2(ロス時+1〜2)【狙い】手前◯m/安全サイド:左/右【型】球センター(or 半個右)/左55–60%/7–8割テンポ【結果】キャリー◯歩/ラン◯歩 → 次回補正:±◯%
よくある質問(FAQ)
- Q. 最優先で見るのは?
- A. 草の向きと浮き/沈みです。そこに湿りが加わるとフライヤー寄りになります。
- Q. 何番手変えれば良いか分かりません。
- A. まず−1番手(フライヤー寄り)または+1番手(ロス寄り)を基準に、ラウンド後に自分の補正表を更新しましょう。
- Q. グリーン周りで上げる?転がす?
- A. ラフでは転がし優先。止めたいときは良ライ限定で着地点を短く設定します。
- Q. ルール上、草をかき分けて確認してもいい?
- A. 規則8の状況の改善に当たる押し倒し・ならしはNG。軽いソールや合理的な探索の範囲に留めてください。