規則8のキーワードは「プレーはあるがままに」。ライ/スタンスのエリア/スイングエリア/プレー線/救済エリア(=条件)を、打ちやすくする方向に改善してはいけません。一方で、合理的な探索・マーキング・軽くソールなど、許される行為もあります。本記事ではNG例→OK例→特例→復元ルールの順で、現場で迷わない運用に落とし込みます。
“状況の改善”とは(規則8の対象)
規則8は、次の5つの条件を意図的に良くする行為を制限します。
- ライ(止まっている球の置かれている状態)
- スタンスのエリア(構える場所)
- スイングエリア(クラブが通る空間)
- プレー線(狙う方向の地面の状態)
- 救済エリア(これからドロップ/プレースする範囲)
このいずれかを良くする行為が、原則としてNGです(違反=一般の罰)。:contentReference[oaicite:0]{index=0}
やってはいけない行為(8.1a)
以下は原則NGです。意図に関わらず、結果として条件が改善されると違反になり得ます。
- 生えている枝や草を折る・曲げる、杭やフェンス等を押し戻す・動かす(境界杭など)。:contentReference[oaicite:1]{index=1}
- 地面をならす・盛る、入れ直したディボットを押し固める、凹凸を埋める。:contentReference[oaicite:2]{index=2}
- 砂やゆるい土を取り除く/押し固める(ティーイングエリアの特例は後述)。:contentReference[oaicite:3]{index=3}
- 露・霜・水を取り除く(ティーイングエリアのみ可。グリーン上も不可)。:contentReference[oaicite:4]{index=4}
- ティーマーカーを動かす(そのホールのティーイングエリアで)。:contentReference[oaicite:5]{index=5}
許される行為(8.1b ほか)
次はOK。結果として条件が少し良くなっても、規則上は許容されます。ただしやり過ぎには注意。
- 合理的な探索・識別・マーキング(拾い上げ→リプレース含む)。:contentReference[oaicite:6]{index=6}
- ルースインペディメント/可動物の除去(落ち葉・小石・携帯品など)。※球が動けば対応が必要(グリーン上は原則無罰で復元)。:contentReference[oaicite:7]{index=7}
- 軽くソール(球のすぐ前後でクラブの重さを預ける程度)。※押し付けは不可。バンカーは別規制あり。:contentReference[oaicite:8]{index=8}
- スタンスを取る(足をしっかり置く、砂やゆるい土にある程度の踏み込み)。通常のスタンスや最小限の動線確保に限る。:contentReference[oaicite:9]{index=9}
- 素振り・バックスイング(バンカーでは砂に触れない)。:contentReference[oaicite:10]{index=10}
特例:ティーイングエリア/グリーン/バンカー
ティーイングエリア(R6.2b)
打つ前なら、次が許可されています:地面を整える・砂や土を押さえる・露や霜・水を取り除く・生えている草を曲げるなど。
ただしティーマーカーを動かすのは不可。:contentReference[oaicite:11]{index=11}
パッティンググリーン(R13.1)
砂・ゆるい土の除去と損傷の修復はOK。
一方で、露・霜・水を取り除くことは不可(改善に当たる)。また、グリーン上では球やマーカーをうっかり動かしても無罰で復元できます。:contentReference[oaicite:12]{index=12}
バンカー(R12)
バンカーは規制が厳しめ。球の直前直後の砂に触れる、素振りで砂に触れるなどはNG。プレー外でコース保全のために均す行為は条件付きで認められます。詳しくはバンカーのルール早見表へ。:contentReference[oaicite:13]{index=13}
復元でセーフにできるケース(8.1c・8.1d)
やってしまったときでも、次なら罰を回避できる場合があります。
- 物を動かした/曲げた/壊した → 元の状態に復元すればセーフ(例:押した杭を戻す、曲げた枝を戻す)。:contentReference[oaicite:14]{index=14}
- 物を“持ち込んで”置いた(ライン上にタオル等) → それを取り除けばセーフ。:contentReference[oaicite:15]{index=15}
ただし、地面を整えた/砂や土を押さえた/露・霜・水を除去したなど、8.1a(3)〜(5)の行為は復元しても罰回避不可です。:contentReference[oaicite:16]{index=16}
実戦で迷いやすい場面(正解は?)
- ラフで草を足で踏み倒して構える:通常のスタンス確保はOK。ただし必要最小限。踏み固めてライを良くする意図はNG。:contentReference[oaicite:17]{index=17}
- パットのライン上の露をタオルで拭く:NG(グリーン上での露・水の除去は不可)。:contentReference[oaicite:18]{index=18}
- グリーンのピッチマークや砂を直す/除去:OK(修復・砂除去は可)。:contentReference[oaicite:19]{index=19}
- ティーイングエリアで芝をならす・露を払う:OK(R6.2b)。ただしティーマーカーは動かさない。:contentReference[oaicite:20]{index=20}
- 杭を押してスイング空間を作る:NG(不動物や杭を動かして改善)。復元できればセーフ。:contentReference[oaicite:21]{index=21}
OK/NG早見表
| 行為 | OK/NG | ポイント |
|---|---|---|
| 生えている枝を折る/曲げる | NG | 条件の改善。復元できれば罰回避の余地あり |
| 砂やゆるい土を押さえる・取り除く | NG | ティーイングエリアを除き不可(グリーン上の砂除去は可) |
| 露・霜・水を取り除く | NG | ティーイングエリアのみOK。グリーン上でも不可 |
| 軽くソールする/素振り(砂に触れない) | OK | 押し付けは不可。バンカーは砂に触れない |
| ルースインペディメント・可動物の除去 | OK | 球が動けば対応。グリーン上は原則無罰で復元 |
| ティーマーカーを動かす | NG | そのホールのティーイングエリアでは不可 |
判断フロー(60秒でOK/NGを切り分け)
- 対象を特定:ライ/スタンス/スイング/プレー線/救済エリアのどれ?
- 区域を確認:ティーイングエリア・グリーン・バンカー等で特例がないか。
- 行為を分類:8.1a(NG)か8.1b(OK)か。迷えば手を加えないのが安全。
- やってしまった?:枝や杭を動かした等なら復元でセーフにできる可能性。
よくある質問(FAQ)
- Q. グリーン上で砂を払っても良い? 露は?
- A. 砂の除去や損傷の修復はOK。露・霜・水の除去はNGです。
- Q. ルースインペディメントをどけたら球が動きました。
- A. 対応が必要です(グリーン上は原則無罰で元位置へ復元)。他の区域では罰になることがあります。
- Q. スタンスで草が多少寝てしまうのは?
- A. 通常のスタンス確保はOK。ただし必要最小限。故意に踏み固めるのはNGです。
- Q. ティーイングエリアで地面をならしても良い?
- A. OK。露や水を払うのも可。ただしティーマーカーは動かせません。