ショートサイドとは、落としどころ(着地点)の余白がほとんどない位置からピンを狙う状況。上げて止めるのか、いったん安全な方向へ“横出し”するのか――判断を間違えると大叩きに直結します。本稿は、着地点の余白・ライ・障害物(リップ/ラフ厚)・傾斜・グリーンの硬さという5条件で判定し、ラフ/バンカー別の現場手順に落とし込みます。
目次
まず結論(30秒サマリー)
- 着地点の余白が「2歩未満」なら、原則横出し(安全方向)。2歩=約1.5mが目安。
- 良ライ+余白2〜4歩+障害物低めなら、高さ勝負も可。条件が1つでも欠けるなら横出し優先。
- 奥が死んでいる(下り急傾斜・OB・バンカー)ときは絶対ショート目。ピン高より手前でOK。
- バンカーはリップの高さと砂質で可否が激変。砂の状態別対策を併用。
判断基準(5条件のチェックリスト)
次の5条件のうち、3つ以上が「×」なら横出しがベター。4〜5つが「◯」なら高さ勝負を検討。
| 条件 | ◯:高さ勝負も可 | ×:横出し推奨 |
|---|---|---|
| 着地点の余白 | 2〜4歩(1.5〜3m)ある | 2歩未満/ゼロに近い |
| ライ | 浮き気味・フェースが入る(ラフ)/通常(砂) | 沈み・逆目・目玉(砂) |
| 障害物 | 低いラフ・低いリップ | 厚いラフ・高いリップ |
| グリーン傾斜 | 上り〜フラット | 強い下り・奥から速い |
| グリーン硬さ | やわらかめ(止まる) | 硬い・フォirm(止まりにくい) |
“高さ勝負”はミスの幅が大きい選択。パー狙いかボギー死守か、スコア戦略も合わせて判断を。
ラフ:横出し or 高さの選び方(実務)
横出しが正解の場面
- 沈み+逆目でフェースが入らない(芝が絡む)。
- 着地点2歩未満かつ下り。奥が“死んで”いる。
- 浮きでも厚い順目でフライヤー気味(フライヤー対策参照)。
高さ勝負を許容できる場面
- 浮きライでフェースが入る。余白2〜4歩・上り・やわらかいグリーンが揃う。
- 横出しの先に“次が難しい”配置しかない(ガードバンカーや強下り)。
高さ勝負の型(ラフ)
- ロフト:58〜60°推奨。フェースを先に開き→握る。
- 入射:深く刺さない。最下点を球の直後〜少し先。
- スピード:7〜8割で一定。強振は芝を余計に噛む。
- 着地点:エッジから1.5〜2歩に必ず落とす設計(下りはさらに手前)。
バンカー:横出し or 高さの選び方(実務)
横出しが正解の場面
- 高いリップが目線を越える/目玉で高さが出ない。
- ふかふかで入砂が増えすぎそう&着地点2歩未満。
- 湿って重い砂で減速が大きく、ピン上にしか止まらない配置。
高さ勝負を許容できる場面
- リップ低め、砂質が読める(砂の状態別対策参照)。
- 基準ショット(9時×やや開き×入砂1cmなど)が打てる足場。
高さ勝負の型(バンカー)
- フェース:しっかり開く→バウンスで滑らせる(リーディングエッジを刺させない)。
- エントリー:球の手前2〜3cm(硬い砂は2cm、柔らかい砂はやや後ろ)。
- 振り幅:8/9/10時の3段階から選び、テンポ一定。
- 着地点:エッジから2歩へ。下りは+1歩手前に補正。
ルール上は素振りで砂に触れない等に注意(詳しくはバンカーのルール早見表)。
狙いのルート設計(3択)
- A:横出し(最小失点ルート)…安全サイドの広い場所へ出して1パット or 2パットで収める。
- B:低めに通して早めに止める(ラフ薄・花道あり)…チップ&ランでピン高に寄せる。
- C:高さで止める(条件が揃う)…上記ラフ/バンカーの型で実行。
よくあるミス → 即修正
| ミス | 原因 | 修正 |
|---|---|---|
| 奥へ大オーバー | 下り+硬いグリーンを軽視/余白不足なのに高さ勝負 | 横出し基準に戻す。高さ勝負は余白2〜4歩が最低条件 |
| 手前に落ちて止まる | 着地点がエッジ直前/下りを恐れすぎ | エッジから+1.5〜2歩へ着地点を修正(下りはさらに手前) |
| バンカーでトップ | 硬い砂で開き過ぎ・バウンスが跳ねる | 開き控えめ+浅い入射(エントリー2cm)へ |
| ラフで引っかかる | 逆目・沈みでフェースが返る | 横出しへ切り替え/高さ勝負ならフェース少し開き+7〜8割で |
OK/NG早見表
| 判断/行為 | OK/NG | ポイント |
|---|---|---|
| 余白が2歩未満→横出し | OK | 最小失点の原則。ボギー死守 |
| 良ライ+余白2〜4歩→高さ | OK | “3◯以上”で初めて選択肢 |
| 下り・硬いのに高さ勝負 | NG | オーバー即死。横出しへ |
| 着地点を歩測しない | NG | 最低でもエッジ+2歩を確認 |
60秒の現場フロー(迷ったらこれ)
- 余白:エッジから着地点まで歩測(2歩基準)。
- ライ:ラフ=浮き/沈み/順逆目、砂=硬/湿/ふかふか。
- 障害物:ラフ厚・リップ高を確認(目線より上→横出し寄り)。
- 傾斜/硬さ:下り&硬い→横出し。上り&柔らか→高さも可。
- 実行:選んだルートの型で、テンポ一定。
よくある質問(FAQ)
- Q. 横出しの“最善方向”はどう選ぶ?
- A. 次の得意距離を残せる場所+パッティングが楽なライン(上り目)を最優先に。
- Q. 高さで止めたい時、最低限の条件は?
- A. 良ライ(フェースが入る)、着地点2〜4歩、上りまたは柔らかいの3条件です。
- Q. バンカーで迷ったら?
- A. リップ高と砂質を優先確認。迷ったら横出し。高さ勝負なら距離感の3レバーで。
- Q. スコアをまとめる秘訣は?
- A. ピンまでの“直線最短”ではなく、最小失点のルートを選ぶこと。奥が死んでいる日は絶対ショート目です。