ティーイングエリアからグリーンを見上げる打ち上げホールや、谷の向こうにグリーンが見える打ち下ろしホール。
スコアカード上のヤード数は同じでも、実際に必要な距離は高低差によって大きく変わります。ここを感覚だけに任せていると、「毎回ショート」「いつもオーバー」といったパターンになりがちです。
この記事では、打ち上げ・打ち下ろしホールでの距離感のざっくり補正と番手選びのシンプルなルールを、ラウンド中に使いやすい形で整理します。
まず結論(30秒サマリー)
- 打ち上げ=実質長く、打ち下ろし=実質短くなる。細かく計算しすぎず「少し/けっこう/かなり」の3段階で補正してOK。
- 打ち上げ:高低差がはっきり見えるなら+1番手、かなりきついなら+2番手も検討。
- 打ち下ろし:軽い下りなら−0.5〜1番手、しっかり下っているなら−1〜2番手を目安に。
- 高低差+風の組み合わせ(打ち上げアゲインスト/打ち下ろしフォローなど)では、より影響が大きい方から優先して考える。
- 100切りレベルでは、番手計算より「絶対にショートさせない/オーバーさせない」方向を決める方がスコアに直結する。
打ち上げ・打ち下ろしで何が変わるのか
高低差があると、次のような影響が出ます。
- 打ち上げ: ボールが上方向に飛ぶ時間が長くなり、キャリーが足りなくなりやすい。
- 打ち下ろし: ボールが落ちるまでの高さが低くなり、キャリーが伸びやすい&ランも増えやすい。
その結果、
- 打ち上げホールでは、スコアカードどおりの番手ではショートしがち。
- 打ち下ろしホールでは、スコアカードどおりの番手ではオーバーしがち。
になるので、あらかじめ番手を上げ下げする前提で考えておく必要があります。
高低差の「見た目」を3段階で整理する
本格的なレーザー距離計には高低差を自動補正してくれる機能もありますが、競技では使えない場合もありますし、毎ショット計算しているとプレーが遅くなってしまいます。
そこで、ラウンド中は高低差を「ほぼフラット/少し/けっこう/かなり」のざっくり3〜4段階で見ておくと便利です。
- ほぼフラット:見た目にはほとんど平ら。番手補正はほぼ不要。
- 少し打ち上げ・打ち下ろし:グリーンが足元より少し高い/低い程度。
- けっこう打ち上げ・打ち下ろし:明らかに見上げる/見下ろす感じ。
- かなりきつい打ち上げ・打ち下ろし:坂の上/谷底に向かうようなレベル。
この体感と、次の「番手の目安」を組み合わせて判断していきます。
打ち上げホールの距離感と番手選び
軽めの打ち上げ(少し高い程度)
- 例:グリーンが少し高く見える、足元から数メートル程度の上り。
- 番手イメージ: 距離によっては補正なし〜+0.5番手程度。
ショートが怖い距離(パー3やショートアイアン距離)なら、
- +1番手を持ってコンパクトスイングの方が、安全にグリーンを捉えやすくなります。
はっきり分かる打ち上げ
- 明らかにグリーンを見上げるようなホール。
- 番手イメージ: 基本+1番手、きついと感じたら+2番手も検討。
例:
- 実測150y/しっかり打ち上げ → いつもの150yクラブ+1番手(160〜165yのクラブ)
- ショートが絶対NG(グリーン手前に深いバンカーなど) → +2番手+コンパクトもアリ
打ち上げ+アゲインスト(向かい風)のとき
高低差と風の両方が「飛ばない方向」に働きます。
- 打ち上げ補正(+1〜2番手)+アゲインスト補正(+1〜2番手)をまとめて考える。
- 「体感でかなりきつい」と感じるなら、思い切って+2番手以上も検討。
- ただし、無理に高い球で届かせようとしない(低め+番手アップ)。
打ち下ろしホールの距離感と番手選び
軽めの打ち下ろし(少し低い程度)
- グリーンが少しだけ見下ろせる程度の下り。
- 番手イメージ: フルショットなら基本はそのまま、距離によって−0.5〜1番手を検討。
「手前のバンカーにだけは入れたくない」というホールでは、あえて番手を落とさず、少しコンパクト目に打つという選択もアリです。
はっきり分かる打ち下ろし
- ティーグラウンドが高く、グリーンがかなり下に見えるホール。
- 番手イメージ: 距離にもよりますが−1〜2番手の範囲で調整。
例:
- 実測180y/しっかり打ち下ろし → 普段180yのクラブではなく170yクラブ(−1番手)。
- グリーン奥がOB・崖などで「オーバー厳禁」のとき → さらに−2番手も検討。
打ち下ろし+フォロー(追い風)のとき
高低差と風がともに「飛びすぎ方向」に作用します。
- オーバーすると大ケガになりやすいので、番手をしっかり落とす(−1〜2番手)。
- パー3では、パー3戦略のとおりグリーンセンター基準で、
「オーバーだけはNG」と決めて手前から攻める。 - ロングホールでは、フォローと打ち下ろしを利用して、レイアップ地点を前にするのもアリ。
ティーショットとセカンドショットでの考え方の違い
ティーショット(パー4・パー5)
ティーショットでは、高低差よりも「どこに置くか」を優先して考えます。
- 打ち上げのパー4:
– 無理にドライバーでギリギリまで飛ばすより、フェアウェイの広いゾーンに置く方が安全。 - 打ち下ろしのパー4・パー5:
– ランが増えるので、突き抜け距離に注意(ドッグレッグ攻略も参照)。
セカンドショット以降
セカンドからは「高低差+ピン位置+風」をセットで考えます。
- 打ち上げ+奥ピン+アゲインスト → ショート絶対NG。+2番手も視野。
- 打ち下ろし+手前ピン+フォロー → 奥オーバーNG。−1〜2番手で、センター〜手前狙い。
ここでも、ピン位置と安全サイドの考え方と合わせると、狙いどころを決めやすくなります。
高低差と風の「優先順位」のつけ方
高低差と風が同時にあるとき、
- 打ち上げ+アゲインスト
- 打ち下ろし+フォロー
- 打ち上げ+フォロー/打ち下ろし+アゲインスト
など、色々なパターンが出てきます。
基本ルール
- 影響が大きいと感じる方から補正する。
- 「高低差の影響」と「風の影響」をそれぞれ+/−1番手ずつ足し引きして、最終的に決める。
例1:打ち上げ(けっこう)+軽いアゲインスト
- 打ち上げ → +1番手
- 軽いアゲインスト → +0.5〜1番手
- 合計 → +1〜2番手くらいで考える。
例2:打ち下ろし(はっきり)+やや強いフォロー
- 打ち下ろし → −1〜1.5番手
- フォロー → −1番手
- 合計 → −2番手前後も視野に入れる。
「足し算・引き算を厳密に」ではなく、番手を1〜2つ動かす感覚で十分です。
OK/NG早見表
| 行動 | OK/NG | ポイント |
|---|---|---|
| 高低差を「少し/けっこう/かなり」の3段階で判断する | OK | 細かいヤード計算より、ざっくりした補正の方がミスが減る |
| 打ち上げで+1〜2番手、打ち下ろしで−1〜2番手を目安にする | OK | 100切りレベルにはこのくらいの大雑把さで十分 |
| 打ち上げ+アゲインストを普段どおりの番手で打つ | NG | ほぼ確実にショート。+2番手も視野で |
| 打ち下ろし+フォローで番手を落とさずフルショット | NG | オーバー&奥のトラブルにつながりやすい |
| ティーショットで「距離」より「置き場所」を優先する | OK | 特にパー4・5では、高低差よりも次打が打ちやすい位置を重視 |
高低差ホールの60秒フロー
- 見た目で高低差を3段階評価(10秒)
– ほぼフラット/少し/けっこう/かなり、のどれかを決める。 - 風向きと強さをチェック(10秒)
– 風の読み方に沿って、アゲインスト/フォロー/横風+弱・中・強を判断。 - 高低差+風で番手をざっくり補正(20秒)
– 打ち上げ:+1〜2番手、打ち下ろし:−1〜2番手を目安に、風の影響も足し引き。 - 危険側と安全サイドを確認(10秒)
– 奥が“死んでいる”のか、手前が危険なのかを確認し、どちらのミスがマシかを決める(安全サイドの考え方)。 - ターゲットを決めてショット(10秒)
– 一度決めたら迷い直さず、いつものリズムでスイング。
よくある質問(FAQ)
- Q. 高低差を数値(何ヤード分)で考えたほうがいいですか?
- A. 上級者や競技ゴルファーなら数値で見ても良いですが、初心者〜100切りレベルでは番手1〜2つのざっくり補正で十分です。細かく計算しすぎると、かえって迷いが増えてしまいます。
- Q. 打ち上げのパー3で毎回ショートします。
- A. まずは常に+1番手を基準にしてみてください。それでもショートするなら、打ち上げの度合いと風を見て+2番手+コンパクトを試す価値があります。
- Q. 打ち下ろしのパー3が怖くて振り切れません。
- A. 「番手を1〜2つ落としてコンパクトに振る」ことで、オーバーのリスクを減らしつつしっかり振り抜けます。パー3戦略どおり、ピンではなくグリーンセンターを基準にしてOKです。
- Q. 高低差と風、どちらを優先して考えればいいですか?
- A. 体感で「どちらの影響が大きいか」を決め、そちらから優先して補正します。例えば、「かなりの打ち下ろし+弱いフォロー」ならまず打ち下ろしを優先、「少しの打ち上げ+強いアゲインスト」なら風を優先するイメージです。
- Q. レーザー距離計の高低差機能だけを頼ってもいいですか?
- A. 参考にはなりますが、ライや風、グリーン周りの状況までは反映されません。距離計の数値+この記事のようなざっくり補正を組み合わせると、より実戦的な番手選びができます。